4−3 1994年北海道東方沖地震および三陸はるか沖地震


(3)両地震の際の震度分布の比較

 1987年岩手県中部沿岸地震の際の震度分布は、調査世帯数が少なく500mメッシュでしか得られていないので、250mメッシュでの震度分布が密に求められた1994年北海道東方沖地震および三陸はるか沖地震での震度分布の比較を行った。両地震の震度分布は、前項で検討したように大局的には整合しており、北海道東方沖地震で震度差がプラスすなわち平均よりも揺れが大きい区域は、三陸はるか沖地震でも震度差がプラスすなわち平均よりも揺れが大きいとの傾向が認められる。しかし、回答数3枚以上のメッシュ(両地震に共通するメッシュ数は700)での相関は、図4−16に示すように相関係数0.46と必ずしも大きくない。すなわち、両地震とも平均より揺れが大きいあるいは揺れが小さいと評価された区域がある反面、一方では揺れが大きいものの他方の地震では揺れが小さいと見なされる区域も存在する。

 この原因として、以下の理由が考えられる。一つはアンケート調査の精度に係わるものである。地震時の体感は個人差があり、アンケート震度には回答者による誤差が含まれる。今回は250mメッシュに3枚以上の区域を信頼性があるものと見なしているが、より多くの回答数があることが望ましいことはいうまでもない。次に250mメッシュ区域内における地盤構造の差異が考えられる。250m四方という区域は細分化されたものであるものの、広域的地質分布の境界に位置するメッシュも多く、またメッシュ内でも局部的に地盤構造の違いが存在する場合がある。両地震における回答者の位置が同一メッシュ内でも異なるため、回答者の少ないメッシュでは位置の影響を内包している可能性もあると考えられる。

 次に、両地震で震源過程の違いにより地震時の揺れ方の特性に差異があったことが考えられる。北海道東方沖地震に比して、三陸はるか沖地震では短周期の波が多く励起されたともいわれている。地震時の地盤や構造物の応答は入力する地震波の周期にも関連するため、両地震での震度差を異にする区域があったものとも考えられる。回答者が10名以上のメッシュでは、回答者の個人誤差や位置の違いによる誤差は比較的少ないものと判断される。図4−17に10枚以上回答者の位置するメッシュ(両地震に共通するメッシュ数223)に限った場合の両地震での震度差の相関を示すが、相関係数は0.59と3名以上の場合に比して顕著な改善がなされているとはいい難い。これらのことから、少なくとも震源過程の違いにより地震時の揺れ方に差異があったことが要因の一つと考えられる。高層住宅が多い市の中心部や振興住宅地の湯沢団地等で、両地震での揺れの程度に差異が認められることは、興味深い事実といえよう。

 なお、回答者が10名以上のメッシュに限定した両地震における震度分布を参考までに図4−18および図4−19に示す。メッシュ数が少なくなり、市域全域での分布は検討しがたいが、これらのメッシュにおける震度は個人誤差や回答者の位置の影響が少ない、より信頼しうる値を示しているもとの評価される。


      第4章目次へ戻る