4−3 1994年北海道東方沖地震および三陸はるか沖地震
(2)盛岡市域における高密度震度分布
1、北海道東方沖地震
図4−11に北海道東方沖地震の際の250mメッシュごとの震度分布を示す。得られた震度は2.9〜4.6と震度の幅が1.7と大きい。アンケートによって得られた震度は平均は3.8であるので各メッシュの震度と平均震度との差を震度差としてその分布を図4−12に示した。メッシュが250mと細分化されているため1987年岩手県中部沿岸地震に比較して、ばらつきが大きい。盛岡駅から東側の中市街地一帯では震度3.0〜3.8(震度差が-0.8〜0)と平均より小さな値を示し揺れにくかった区域が多いものの、震度3.9〜4.0(震度差が+0.1〜+0.2)とやや大きく揺れた区域も散在する。市域の北西部では震度3.8〜4.6(震度差が0〜+0.8)と全体的に揺れが大きい。特に揺れが大きかったのは、大新町・南青山町・青山町・中堤町・みたけ・上堂・厨川、滝沢村滝沢・同鵜飼等の一部で、市域の北西部に広く分布している。また、震度が得られたメッシュ数が少なく空白の区域が多いが、南部の永井・飯岡・湯沢の一部等にも揺れの大きかった区域がある。北東部の桜台でも揺れが大きい。これに対して中川町・新田町・長田町・中央通・内丸等の旧市街地、北山・浅岸・下米内等東部の山地は震度差がマイナスで揺れが小さい。また、南西部の太田では回答が得られたメッシュ数が少ないため全域的なことは不明であるが、震度差がプラスのメッシュは少なく、揺れにくいことが推定される。松園団地・湯沢団地等の宅地造成地も震度差がプラスのメッシュが少なく全体的に揺れが小さかったと評価される。
2、三陸はるか沖地震
図4−13に三陸はるか沖地震の際の250mメッシュごとの震度分布を示す。得られた震度は3.1〜5.0と震度の幅は1.9と大きい。アンケートによって得られた震度の平均は4.0であるので各メッシュの震度と平均震度との差を震度差としてその分布を図4−14に示した。震度分布は北海道東方沖地震同様かなりばらつきがあるが、分布の概略的な傾向は北海道東方沖地震の際と似ている。盛岡駅から東側の旧市街地一帯では震度3.4〜4.0(震度差が-0.6〜0)と平均より小さな値を示し揺れにくかった区域が多いものの、震度4.1〜4.3(震度差が+0.1〜+0.3)とやや大きく揺れた区域も散在する。市域の北西部では震度4.1〜5.0(震度差が+0.1〜+1.0)と全体的に揺れが大きい。特に揺れが大きかったのは、前九年・青山町・みたけ・下厨川・黒石野、滝沢村滝沢・同鵜飼等の一部で、市域の北西部に広く分布している。南部の津志田・見前等の一部にも揺れの大きかった区域がある。また、震度が得られたメッシュ数が少なく空白の区域が多いが、南部の永井・飯岡・湯沢の一部等にも揺れの大きかった区域がある。北東部の桜台でも揺れが大きい。これに対して天昌寺町・中屋敷・材木町・長田町・本町通・内丸・馬場町・大沢川原・茶畑・八幡町等の一部市域の中央部、加賀野・浅岸等東部の山地は震度差がマイナスで揺れが小さい。南部の津志田・三本柳・黒川等にも揺れの小さな区域がある。また、南西部の太田・本宮等では回答が得られたメッシュ数が少ないため全域的なことは不明であるが、震度差がマイナスのメッシュが散在する。松園団地等の宅地造成地も震度差がプラスのメッシュが少なく全体的に揺れが小さかったと評価される。
両地震の震度分布を概観すると、大局的な傾向は両地震で類似しており、市域の地質構造と整合している。すなわち、火山砕屑物の分布する北西部では震度差がプラスすなわち揺れやすく、輝緑凝灰岩や花崗岩等の基盤が地表あるいは地表下ごく浅部に分布する旧市街地から東側山地一帯では揺れにくい。また、砂礫層が分布する市域の西部でも震度差がマイナスの区域が広がっている。図4−15にA-A'断面における地下構造と三陸はるか沖地震の際の震度とを比較して示す。平均震度が4.0に対し、輝緑凝灰岩や砂礫が地表に分布する区域では震度は小さく、ロームが分布する区域では平均より大きく揺れやすい傾向が明らかである。すなわち、地震時の揺れの程度は表層地盤に密接に関係している。