2−4 ボーリング資料に基づく地盤特性


 (2)N値分布

 N値は現位置における土の硬軟・締り具合の相対値を表す指標であり、JISで規格化された標準貫入試験によって得られる。重量63.5kmのハンマーを75cm自由落下させ、標準貫入サンプラーを30cm打ち込むのに要する打撃回数、一般的にN値5以下は非常にゆるい地盤、50以上は締まった地盤と評価される。

 地球物理学的な見地からは、S波速度が3km/sec以深の岩盤を基盤と見なしているが、建築物の基礎たおていの観点からは、N値が50以上の基盤に到達するまでの深度を、基盤深度としてその分布を調べた。図2−14に基盤深度分布を示すが、N値50到達以前で堀止めになった地点が多く、詳細な分布は把握し難い。しかし、分布の傾向を概観すると、5m以浅から40m以深と区域により著しい違いが見られる。西部の本宮から太田にかけては砂礫層により5m以浅の区域が点在し、また、基盤に到達したものが少ないが仙北町から津志田でも10m以浅と浅い地点が見られる。盛岡駅の西側から旧市街地一帯にかけては10〜20mと比較的浅い区域が広がっており、高松・内丸・八幡町付近では10m以浅と浅い。これに対し、市域の北西部は30m以深と深い傾向がある。前九年・青山では30m以深、厨川・みたけでは40m以深と深い。これらの傾向は前述した地質構造とも整合的である。なお、松園団地にも30m以深のコンターがひかれているが、これは谷筋を埋めた盛土地盤の部分でのボーリングによるもので、山地を整地して造成された団地全体の基盤深度が深いわけではないと推測される。

 地震時の揺れには、表層地盤の硬軟の程度も影響を及ぼす。そこで、地表から深さ5mまでおよび10mまでのN値の平均値を求めた。ボーリング資料には一般に深さ1mごとのN値が記載されており、各深度までのN値の算術平均をもって、表層5m平均N値および表層10m平均N値とした。それぞれの分布を図2−15および図2−16に示す。表層5m平均N値、表層10m平均N値とも、5以下の軟弱な地点から50以上の堅硬な地点まで広範囲に分布する。

 表層5m平均N値の分布をみると、N値20以上のやや堅硬な範囲は太田・本宮地区から盛岡駅周辺をへて山岸・中野・仙北町にかけて広く分布し、上太田・本宮・材木町・内丸・八幡町・加賀野・中野・馬場町等にはN値30以上の地点も点在する。一方、山田線・田沢湖線から北側の山地を除く地域は一般にN値10以下と小さく、特に前九年・大新町・青山町・月が丘・みたけ・厨川にかけての広い区域はN値5以下と非常に軟弱である。また、高松・上田にもN値5以下の区域が広がっており、東新庄にも局部的に5以下の区域が見られる。

 N値は一般に深くなると大きくなる傾向があり、表層10m平均N値は表層5mの値に比して大きな値を示すが、分布の傾向に大きな違いはない。太田・本宮地区から仙北町駅付近を除いた旧市街地一帯、津志田・見前等南部区域にN値30以上の地域が広く分布する。しかし、北西部の前九年・青山町・みたけ・厨川一帯ではN値5以下と軟弱であり、高松にも同じく5以下の区域が見られる。これらの傾向は、前項で示した表層地質とも整合的である。すなわち、大局的には火山泥流堆積物が分布する北西部および高松地区等でN値が小さく、花崗岩等が地表下浅所に分布する旧市街地および基盤岩類が地表に分布する東部一帯ではN値が大きい。また、砂礫が分布する西部および南部でもN値が大きい。しかし、局部的に軟弱な部分も点在しており、湿地等の旧地形や局部的地盤状況も関連していることを伺わせる。


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