1−1 地震の発生機構


 世界における地震の発生場所(震源)をみると、太平洋をとりまく環太平洋地震帯(火山帯)等特定の地域に集中している。図1−1に深さ300km以浅でおきた地震の震源分布を示すが、震源は大陸の周縁部や大洋の中央部等に連なって発生しており、北米・南米・アフリカ・オーストラリア等の大陸の内部ではわずかしか発生していない。

 最近の地球科学の考え方に従うと、地球の表面は図1−2に示すようにいくつかの岩盤(プレート)に覆われており、海嶺から湧きだしたプレートは数cm/年程度とわずかであるが移動し、他のプレートにぶつかるとその下に潜り込んでいく。その際の摩擦・圧力で溶融したマグマが地表に上昇して噴出したのが火山であり、歪みが増大して耐え切れずに岩盤が破壊されると地震が発生する。日本付近は、図1−3に示すように、太平洋側から押し寄せる太平洋プレート・フィリピン海プレートが日本列島をのせた北米プレート・ユーラシアプレートに衝突する位置にあり、世界でも有数の地震国となっている。

 地震は発生する場所により、プレートの境界部で生ずるプレート間地震、プレートの内部で生ずるプレート内地震、および地殻内で生ずる地殻内地震に大別される。図1−4に岩手県付近を例に、地震のタイプを模式的に示す。プレート間およびプレート内地震は、プレートの沈み込み付近を中心に発生し地震の規模が比較的大きい。地殻内地震は、地表から浅い所で発生するため、地震規模が小さくても大きな被害をもたらす場合がある。なお、直下型というのは特別の性質をもったものではなく、内陸で発生する地震は真上の地域からみれば直下で発生したことになるため、俗称されているものである。また、過去200万年以内に活動した形跡のある断層を活断層と称するが、これは地域的な隔たりはあるものの日本列島のいたる所で多数見い出されている。

 プレートは常に日本列島を押しており、歪みは蓄積されていくものであるから、一定期間の経過に伴い地震は必ず発生する。その意味で、規模と頻度はともかく、日本列島で地震の発生しない場所はないといえる。表1−1に明治以降死者を出した主な地震を示すが、120年余の間に40件以上の大震災が発生している。

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